Research Case Study

全体概要

NanoTerasuとは

NanoTerasu(ナノテラス)は、宮城県仙台市の東北大学青葉山新キャンパスに設置される、1メートルの10億分の1というナノの世界を観察することができる世界最高水準の先端大型研究施設です。NanoTerasuは、電子を加速器によりほぼ光の速さまで加速し、太陽光の約10億倍にも及ぶとても明るい放射光というX線を発生させ、これを物質に照らすことにより観察を行います。このような観察を通じて、基礎科学はもちろんのこと、エネルギー、材料、デバイス、バイオ、食品など様々な産業領域において幅広く利用され、科学とイノベーションの両面を支えます。
(一般社団法人光科学イノベーションセンターHPより一部抜粋)

東京理科大学におけるNanoTerasuの活用

本学は特約ゴールド会員(年間400時間を上限として、ナノテラスを供用開始後10年間利用することができる権利を付与)として一般財団法人光科学イノベーションセンターコアリションメンバーに加入しています。

同センターが実施する生成AIを活用した学術機関メンバーと企業メンバーとの課題解決に向けたマッチング制度等の取り組みにも積極的に参画し、「NanoTerasu」を活用した研究を推進しています。

本学で利用をご希望の方は以下をご確認ください。

利用方法等(学内向けCENTIS)

https://portal.tus.ac.jp/centis/node/20062

本学とNanoTerasuを活用した連携を希望する企業さま等は以下よりお気軽にお問い合わせください。

共同研究をご希望の方へ(学外者向け)

https://www.tus.ac.jp/ura/contact/

活用事例

Pick Up 01

結晶・電子構造解析を駆使した次世代マグネシウム二次電池用正極材料の創製

研究室名
井手本・北村研究室
概要

安価で安全性に優れ、高いエネルギー密度を持つマグネシウムを用いた二次電池が、リチウムイオン電池を代替する二次電池として期待されています。本研究ではマグネシウム二次電池の正極材料としてスピネル型構造のマグネシウム-バナジウム-マンガン酸化物に着目し、最適なMg/V比を探索しつつ、電池特性と結晶構造の関係を調べました。Mn置換量をx=0.15で固定して、Mg組成が1.23と1.25の試料の放充電特性を調べた結果、Mg組成が1.25の試料の方が優れた電池特性を示すことが分かりました。その要因を明らかにするため、ナノテラスのBL08Wで回折測定を行い、結晶構造を検討しました。その結果、Mg1.23の試料の方がホスト構造を形成するMO6八面体(Mはカチオン)の歪みが大きいことがわかりました。したがって、歪みの大きさが電池特性と関係していると考えられます。

Pick Up 02

コロイド・界面化学による界面現象の理解とものづくりへの展開

研究室名
酒井秀樹・酒井健一研究室
概要

当研究室では、界面活性剤をはじめとする両親媒性分子が形成するミセル・ベシクル・リポソーム・リオトロピック液晶などの分子集合体やエマルションについて、その構造や物性を、ナノテラス等の線源を用いた小角X線散乱(SAXS)法や凍結透過型電子顕微鏡(Cryo-TEM, Freeze Fracture TEM)観察、界面レオロジー測定などの先端計測法を駆使して評価するとともに、その分散安定性や使用時の感触などとの相関を明らかにすることを指向した基礎・応用研究を展開しています。化粧品・トイレタリー製品・食品・ドラッグデリバリーシステム(DDS)・インク・顔料などの産業分野との産学連携も積極的に進めています。

Pick Up 03

シルクを用いた生体センサー

研究室名
中嶋研究室
概要

物質を介して、機械的な応力を電場に変換したり、電場印加によって歪が誘起される現象を圧電効果といいます。このような性質を利用した応用としては、応力センサーやアクチュエーター、超音波素子などがあり、多くは無機材料が実用化されています。一部は合成高分子などの有機材料において圧電性が確認されていますが、物質としては多くはありません。今回、このような圧電性を探求する対象として、シルクに注目した研究を進めています。
シルクに圧電性があるということは定性的には知られていたのですが、応用可能な出力が得られるという期待は薄く、実用化も勿論なされていません。シルクはフィブロンという結晶部とそれを取り囲むセリシンによって構成されており、このフィブロンが一軸方向に配向することによって圧電性が発現されます。
本研究では、ナノテラスのビームラインBL08Wを利用しまして、広角X線回折WAXDおよび小角X線散乱SAXSを用いて、様々なシルクの結晶構造と配向を温度を変えて系統的に計測しております。こちらの図はWAXDのデータになりますが、こちらを解析することで、配向度や結晶化度を評価しています。このような構造解析と表に示すような圧電性の評価を行うことで、その物性値との関係性が明らかになりつつあります。特にこの特性値は、センサ応用が可能なレベルでもあり、生体内への埋め込みなどによる新たな応用が可能と考えています。
以上の研究は、東北大学スライスSRISの小野先生と小林理学研究所の児玉先生らとの共同研究になります。今後はマラヤ大学や厦門大学の研究者と連携した学際研究や、企業を含めた応用研究を検討しています。ナノテラスの活用によって共同研究としての広がりが生まれてきているとのことです。

Pick Up 04

配位ナノシートインクの合成と構造解明

研究室名
西原研究室
概要

配位ナノシートは、平面配位子と金属イオンからなる二次元層状物質である。最近、当研究室では配位ナノシートインクを作ることに成功し、同じ原料からでも二種類の配位ナノシート(Ni1.5BHT, Ni3BHT)を作り分けられることを明らかにしたが、その化学構造の違いを直接示すことはできていなかった。そこでナノテラスのBL08Wを利用し、XANES・EXAFS測定を行った。上述の二種類の配位ナノシートのNi-K吸収端のスペクトルは同様の形状で、Ni周りの配位環境が共通していることを示唆した。一方、S-K吸収端のスペクトルは異なっており、S周りの配位環境の違いを示唆した。これらの測定結果からNi1.5BHTは空孔をもち、Ni3BHTは密に詰まった化学構造であることを明らかにした。この成果は国際学術誌Smallに掲載されFront coverに選出された。
M. Ito et al., Small, 2025, 21, 2503227.
DOI:10.1002/smll.202503227

Pick Up 05

ナノテラス X線CT観察

研究室名
前田・安盛研究室
概要

当研究室では無機材料の組成・組織と材料特性の関係を調べ、高機能材料を創出することをミッションとしている。中でも、ガラスを熱処理して得られる結晶化ガラスは、その代表的な材料であり、析出結晶種やその組織を制御することで、無機材料固有の脆性を低減させることを目指している。
そのためには結晶化ガラスのような複合材料の組織や、それに外力が加わった際に材料内部に発生するマイクロクラックを直接観察することが必須となっている。放射光を用いたX線CTイメージング技術は、その目的に合った最適な方法であり、いくつの材料について実際にナノテラスで観察を行った。